エンゼルフィッシュは熱帯魚のイメージそのものと言っても過言ではない程、有名な魚ですね。
特徴でもある菱形の体型は他の熱帯魚では見られない独特なシルエットです。
初めて輸入されてきたエンゼルフィッシュを見た人はすごい衝撃だったでしょうね。
ふわふわと優雅に泳ぐその姿はまさにエンゼルフィッシュ!
また、[エンジェル]ではなく[エンゼル]なのも古い喫茶店の名前みたいでメランコリックな気分にさせてくれます。
今回はそんな[純喫茶えんぜるふぃっしゅ]でとっても可愛い熱帯魚[エンゼルフィッシュ]のお話にお付き合いください。
エンゼルフィッシュとはどんな熱帯魚?
エンゼルフィッシュは1910年頃にドイツで趣味としての飼育が始まり、日本へ入ってきたのは1930年頃といわれています。
白銀色の美しい色彩と優雅な泳ぎが大変魅力的で綺麗で丈夫なうえ、初心者でも繁殖が楽しめるなどの理由から古くから人気を集め、熱帯魚の代名詞的存在とまで言われるまでになりました。
現在市場には様々なエンゼルフィッシュが流通していますが、その元となる原種は3種存在します。
スカラレ エンゼルフィッシュ、アルタム エンゼルフィッシュ、デュメリリィ エンゼルフィッシュの3種です。
スカラレ エンゼルフィッシュ
スカラレ エンゼルフィッシュは他の原種(アルタム エンゼルフィッシュ、デュメリリィ エンゼルフィッシュ)に比べ丈夫な事、色彩豊かな事、繁殖が容易であること等の理由から改良品種が多く作出されてきました。
現在流通しているエンゼルフィッシュの改良品種の母体となった野生種がこのスカラレ エンゼルフィッシュです。
流通量が最も多い品種もこのスカラレエンゼルで、一般的にエンゼルフィッシュと呼ばれているのはこのスカラレ エンゼルフィッシュのことが多いです。
スカラレ エンゼルフィッシュは水槽内をゆっくりと優雅に泳ぎ、複数匹飼育することで非常に美しい景観を生み出してくれます。
これはエンゼルフィッシュの分布が、南アメリカのアマゾン川流域の水の流れがあまりない水域に生息する熱帯魚である為です。
あのゆっくりとした優雅な泳ぎは故郷の環境からくるものなんですね。
アルタムエンゼルフィッシュ
アルタム エンゼルフィッシュは、ネグロ川、オリノコ川の上流域に分布しています。
アルタムエンゼルフィッシュの他の2種との大きな違いは顔です。
頭部が凹んでいて[ドラえもん]のスネ夫っぽい顔をしています。
その他の特徴としては、上下に長く伸長する綺麗な背ビレ、尻ビレの美しいプロポーションと、やや赤褐色を帯びる体色も挙げられます。
ヒレを含んだ体高は30cm近くまで成長し、エンゼルフィッシュの中では最も人気が高く、水草の多い水槽ではより綺麗に映えることからエンゼルフィッシュの最高峰といわれる事もあります。
また、アルタムエンゼルフィッシュは飼育が難しい事で知られています。
水質に非常にデリケートで、菌やウイルスに対する抵抗力が弱い事が飼育が難しい理由に挙げられます。
デュメリリィエンゼルフィッシュ
デュメリリィエンゼルフィッシュの他のエンゼルフィッシュとの一番の違いは顔です。
頭部が丸く、エンゼルフィッシュ特有の鼻先の凹んだ箇所がなく少しひょうきんな顔をしています。(注:個人の感想です。)
また、ヒレもそれほど伸長せず、体色も落ち着いていて、目のすぐ横を縦に通る薄い黒線が、他の2種は1本ですが、対してデュメリリィエンゼルフィッシュは2本あります。
これだけ聞くと、エンゼルフィッシュの良いところが全部弱まったように思いますが、もちろん長所もあります。(注:個人の感想です。)
デュメリリィエンゼルフィッシュはエンゼルフィッシュの3種の原種のうち1番小型な野生種として知られています。
そう!小さいところがいいんです。
エンゼルフィッシュにおいて小型って事は良いところなんです。
エンゼルフィッシュは外見に似合わず、肉食魚なので大きくなる他の2種は小型の熱帯魚との混泳に気を使います。
その点、5〜7cm前後のデュメリリィエンゼルフィッシュは小型なので、ネオンテトラなどの小型カラシン等とも混泳できますよね。
これって、意外に大きな特徴ではないですか?
やっぱり、アクアリウムをするなら水草水槽で綺麗な熱帯魚をたくさん混泳させたいですものねー。
そのためデュメリリィ エンゼルフィッシュはこの品種のみで飼育するよりも水草水槽などの飼育に向いているといえます。
しかしながら、エンゼルフィッシュは縄張り意識が強いとされるシクリッドの仲間なので、デュメリリィエンゼルフィッシュも例に漏れず性格は少し神経質で、繁殖時等には他の熱帯魚を追いかけるようになります。
また、デュメリリィエンゼルフィッシュは成魚になれば原種エンゼルの中でもっともカラフルな種類ともいわれています。
水質は弱酸性の軟水で飼育します。
飼育はしやすいです種類です。
幻のエンゼルフィッシュ?
デュメリリィエンゼルフィッシュは輸入量が少なく、少し前までは[幻のエンゼルフィッシュ]と呼ばれてきました。
しかしながら、近年では国内でもブリードものが流通するようになりましたので幻感は薄れてきています。
エンゼルフィッシュの生態情報
【学名】
Pterophyllum
【種目】
魚類 スズキ目 ベラ亜目 シクリッド科 エンゼルフィッシュ属
【分布】
アマゾン河
【サイズ】
7〜14cm
【寿命】
エンゼルフィッシュの飼育条件
[温度] 28℃~30℃
[水質] 弱酸性〜中性
【水質について_詳しくはこちら】
[ 餌 ] 人工飼料、生餌
[注意点]
デュメリリィエンゼルフィッシュ以外の2種は飼い込むとサイズがかなり大きくなります。
その特徴でもある背ビレと尻ビレが綺麗に伸長した美しいプロポーションを創り上げていくためには、横幅だけではなく高さも、ゆとりある水槽サイズが必要です。
はじめから遊泳に余裕のある大きめの水槽で飼育する事をおすすめします。
体高やヒレの伸長が綺麗にでるように高さが十分ある水槽でゆったりと飼育すると美しく育ちます。
スカラレエンゼルフィッシュ、デュメリリィエンゼルフィッシュは極端な水質の変化でなければ弱酸性〜中性の軟水で問題なく飼育が可能です。
それに比べるとアルタムエンゼルフィッシュは水質にデリケートで気を使う必要があります。
また病気の原因になりますので水槽導入時はしっかりと水合わせを行うようにして下さい。
特に幼魚のうちは水質の急変や水質の悪化に弱く十分にろ過の効いた環境を用意してあげる必要があります。
アマゾンソードやエキルドルスなどの水草と一緒に飼育してあげるとスカラレ エンゼルフィッシュにとってストレスのない落ち着いた環境になります。
混泳
エンゼルフィッシュの特徴でもある長いヒレをかじる種との混泳は適しません。
低層魚のプレコやコリドラス、ローチの仲間とは相性が良いです。
また、エンゼルフィッシュは肉食です。
特にスカラレ種とアルタム種の2種と小型のカラシンなどはエンゼルフィッシュが成長すると食べられてしまうことがあるので、小さい熱帯魚との混泳は避けましょう。
小さなエビ等も肉食であるスカラレ エンゼルフィッシュにとっては餌になりますので混泳はできません。
エンゼルフィッシュ同士での飼育では成長と共に力関係の弱い個体がいじめられることがあるので、様子を見て隔離をしてあげる必要があります。
また海外ブリード個体と国産ブリード個体を一緒に飼育すると細菌による感染症が伝染してしまう事もあるようです。同じ水槽での飼育は控えた方が良いかも知れません。
水草や流木など隠れる場所があるとよいでしょう。
繁殖
エンゼルフィッシュは雌雄の判別が難しく、繁殖を狙うなら複数匹飼育し、自然形成されたペアを得る必要があります。
出来上がったペアは一緒に行動し、他魚を追い払いテリトリーを主張するようになります。
アマゾンソードの葉やフィルターのパイプ等の産卵床代わりになるものを用意すれば容易に産卵します。
エンゼルフィッシュは産卵後、親魚のお父さんお母さんが卵や稚魚の世話をする為、「あとは若い二人(二魚)に任せておきましょう。」で問題ありません。
他のエンゼルフィッシュや未熟な若いペアは食卵してしまうことがありますので別に育児部屋を用意するのもおすすめです。
孵化した稚魚はブラインシュリンプなどを与えると良いでしょう。
スカラレ エンゼルフィッシュはある程度育ってしまえば問題ありませんが、小さいうちは水質の変化にも敏感ですので水替えなどをマメに行い水の汚れには気をつけましょう。